「無駄」という言葉を辞書で引いてみると「役に立たないこと。それをしただけのかいがないこと。また、そのさま。無益。」とあります。無駄を生まずに何かを成し遂げる、使い切る、活かしきるというのは経験値や要領を得ないと難しいことかもしれません。今回ご紹介するのは、東大阪市に建つ三階建ての住宅です。タカヤマ建築事務所が提案したのは同じ大きさの3つの箱をズレさせて積み重ね、敷地内の空間を上手に活かしきるという計画でした。「無駄」と感じていたものが、後々に無駄ではなくなるという事も起きたりしますよね。ひょっとしたら、この住宅から無駄を活かすヒントが隠れているかもしれません。
まさに3つの箱が重なった住宅外観。重箱を開くかのように少しずつずらしながら変化のついたそのフォルムはシンプルながら大きな効果が生まれます。角地にたつ住宅はそのコーナー目一杯に芝生エリアが設けられました。芝生の上に置かれた椅子など、見慣れた近所の人が気軽に話しかけたり休んだりする事が出来そうな雰囲気です。しかしこんなにオープンな外構ですが、建物には大きな木製の扉が。一度閉じてしまえば、完全に外と中を分離する防犯性にも優れた扉です。
少し控えめな位置にある玄関へのアプローチ。しかし、敷地ギリギリに来客を迎えるのは、本住宅の模型のようなオシャレで可愛らしい表札。そのまま進めば二階から挨拶出来そうなベランダが覗きます。少しのユーモアと社交性を織り交ぜたアプローチは、近隣住宅にも親しみの湧くデザインです。
どんと大きな住宅外観に映える木製扉を引いてみると、広くて大容量の倉庫が。芝生のエリアも合わせれば、そこはまるでなんでも屋さんのように工作や修理、保管に収納が可能となります。そしてその倉庫へは住宅の玄関へとダイレクトにつながり、外から通り抜けの出来る造りになっています。雨の日や冬の寒い日にわざわざ外へ廻ってモノを取りに行く事なんてありません。家の中から出し入れ出来るのも防犯上にも便利ですよね。
建物の構造上為にもサッパリとしたベランダ。そこには住宅のイメージにぴったり合う、細身のシンプルな手すりが掛かります。一脚の椅子と植物によって、そこは何とも清々しい街並みを見下ろす特等席に早変わりです。敢えて庇を設けないことにより、その視線は広がり、要は「晴れた日に大いに楽しむことが一番」ということかもしれません。
二階へ上がるとそこは住宅のメインでもある水廻りにリビングダイニング。正方形に近い間取りから、空間の中央に設けられたキッチンを囲うように、お風呂、ダイニング、リビングと動線が連続します。家事をする人にとってかなりスムーズに一連の作業が行える空間です。そして、コンパクトなキッチンは、住宅の外観からのイメージはピッタリで木板のスタイリッシュなデザインです。
リビング・ダイニングエリアは天地いっぱいの開口から十分な採光が差し込みます。開口にかかる壁構造の骨組みは、空間に木の持つ温かい雰囲気をダイレクトに表現しているようです。家族で過ごす空間は一体感のある空間で、コミュニケーションが容易にとることができます。